日本消化器内視鏡学会雑誌
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脊椎カリエスの流注膿瘍穿破に続発した結核性食道潰瘍の1例
―食道結核本邦報告例42例の検討―
佐野 真杉岡 篤五月 女恵一江崎 哲史奥田 康一住山 正男堀部 良宗吉崎 聰
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1990 年 32 巻 11 号 p. 2598-2609

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抄録

 脊椎カリエスに伴う流注膿瘍の穿破による結核性食道潰瘍の1例を報告し,自験例を含む食道結核の本邦報告例42例につき検討を加えた.症例は61歳男性.胸部上部食道の右前壁に潰瘍性病変を認め,表在陥凹型食道癌を疑い生検を行うも病理組織学的に悪性像は証明されず,その後1カ月で潰瘍は自然に消退し瘻孔の形成をみた.諸検査にて第2,第3胸椎の脊椎カリエスとそれに伴う流注膿瘍が発見され膿瘍の食道穿破による潰瘍形成と診断,抗結核療法を開始したところ瘻孔は18日間で完全に閉鎖した.脊椎カリエスに対しては病巣掻爬,前方固定術を施行,術後1年2カ月の現在のところ経過良好である.脊椎カリエスに続発した食道結核の本邦報告例はこれ迄わずかに2例しかなく,本例は脊椎カリエスにより表在陥凹型食道癌類似の食道潰瘍が形成され,その後縮小,瘻孔形成,癩痕治癒に至る経過を追跡し得た最初の症例である.食道結核42例の検討から 1)食道結核の肉眼形態は多彩であり,8型に分類出来る.形態学的に診断を下すことは困難であるが,その経時的な変化は重要な特徴である. 2)食道結核の診断は,内視鏡下食道生検,ツベルクリン反応,胸部単純X線撮影,結核菌検査等により可能である. 3)抗結核療法の有用性が高く,治療の第1選択とすべきである. という結論を得たので併せて報告する.

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