日本消化器内視鏡学会雑誌
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食道癌術後の再建胃管に発生した胃癌の1例
―本邦報告例の文献的考察―
中田 博也奥 篤坂辻 喜久一吉岡 美咲土井 みさこ宮本 久夫谷内 俊文中山 恒夫西岡 新吾矢高 勲大島 章
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1990 年 32 巻 11 号 p. 2611-2617_1

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抄録

 重複悪性腫瘍(重複癌)は増加の傾向にあり,食道癌と胃癌の重複癌も増加してきている.しかし,食道癌術後の再建胃管から発生した胃癌は稀である.今回,われわれは早期食道癌術後の再建胃管から発生した胃癌の1例を経験したので本邦報告38例の文献的考察を加えて報告する. 症例は59歳,男性.5年前に食道癌(扁平上皮癌)のために食道亜全摘術を受けた.吐血,食物の通過障害を主訴として来院.上部消化管造影や内視鏡検査では胸部上部食道から再建胃管に全周性の狭窄を認め,生検標本で乳頭状腺癌と診断した.また肝臓に多発性転移巣を認めた.人工食道挿入等を施行し症状の改善をみたが,その後全身状態徐々に悪化し2カ月後に死亡した.今後,食道癌治療の向上等により再建胃管から発生する癌の増加が予想され,術後も内視鏡検査による経過観察が重要と思われる.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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