日本消化器内視鏡学会雑誌
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著明な低カリウム血症と筋肉逸脱酵素の上昇を伴ったS状結腸進行癌合併直腸villous tumorの1例
徳山 猛東口 隆一辻本 正之山中 貴世夫 彰啓中島 啓坂口 泰弘宮高 和彦砂川 正興大貫 雅弘安田 慎治八倉 萬之助
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1990 年 32 巻 11 号 p. 2640-2645_1

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抄録

 症例は67歳男性.頻回の粘液性下痢を主訴として来院.生化学検査では,血清Kの著明な低下と,これによると考えられる筋肉逸脱酵素の上昇を認めた.注腸造影と大腸内視鏡検査にて,直腸にビロード状の腫瘤を認め,S状結腸に山田4型のポリープおよびBorrmann3型の進行癌を認めた.生検によりそれぞれ絨毛腺腫,腺管腺腫,高分化腺癌と診断し,手術を施行.切除標本では直腸に腸管全周におよぶ広基性の腫瘤を認め,病理組織学的所見は腫瘤のほとんどの部分が絨毛腺腫であったが,一部に癌化を認め粘膜下層へ浸潤していた.S状結腸には,腺管腺腫よりなる山田4型のポリープと,ssへ浸潤した高分化腺癌よりなるBorrmann3型進行癌を認めた.術後血清Kは正常化し経過良好であったが,18カ月後S状結腸進行癌の再発のため死亡した.大腸のvillous tumorにおいて,腫瘍からの粘液分泌による電解質異常や脱水,いわゆるelectrolyte depletion syndromeをきたす例は稀であり,本邦例では自験例を含め20例にすぎない.また本例は,著明な低K血症による筋肉逸脱酵素の上昇を認めた興味ある症例と考え報告した.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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