日本消化器内視鏡学会雑誌
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潰瘍性大腸炎に合併した早期直腸癌の2例
脇谷 勇夫山本 博土居 偉瑳雄日野 直紀千先 茂樹矢野 慧小笠原 敬三高三 秀成能登原 憲司山本 寛
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1990 年 32 巻 11 号 p. 2646-2655

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抄録

 潰瘍性大腸炎に合併した早期直腸癌の2例を報告した. 第1例は58歳の男性で,18年間経過した全大腸炎型の症例である.下痢が増加したためおこなった大腸X線検査で,直腸にIIa+IIc様病巣を認めた.早期直腸癌の診断で経肛門的腫瘍切除術が施行された.わずか4カ月後に直腸手術創の近傍に漿膜にいたるBorrmann I型様腫瘤を含む癌病巣が4カ所出現した. 第2例は,72歳の女性で11年間経過した左側結腸炎型の症例である.大腸内視鏡検査を8年間毎年おこなってきたが,今回直腸に赤色の扁平隆起を認めた.早期直腸癌の診断で左側結腸切除術がおこなわれた. 組織学的には,いずれも高分化腺癌でdysplasiaを伴った粘膜癌であり,潰瘍性大腸炎を母地として発生したものと考えられた. 10年以上経過した潰瘍性大腸炎例は毎年定期的な大腸内視鏡検査をすべきであり,その際特に直腸の隆起性病変に注意して観察および生検すべきであると考えられた.

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