抄録
症例は16歳女性.13歳の時,小人症および慢性皮膚粘膜カンジダ症と診断され,治療を受けていた.最近4カ月間,肺炎にて入退院を繰り返していたが,抗真菌剤等にて治療中,肝機能障害をきたしたため,腹部CT施行し,下部食道の壁肥厚を指摘され,当科に精査を依頼された.この間特に消化器症状は訴えてはいない.上部消化管検査にて,下部食道の前後壁にわたるmucosal bridgeの形成,およびその周囲粘膜の発赤,びらんを認めた.その肛門側では,食道裂孔ヘルニアおよび胃噴門部小彎側に円形の深掘れ潰瘍を認めた.mucosal bridge付近の食道粘膜の生検では高度の食道炎の状態であったが,生検部よりカンジダ等の原因菌は分離されなかった.以上より,自験例のmucosal bridgeの原因として逆流性食道炎が推測された. 食道のmucosal bridgeは非常に稀であり,炎症性病変ないし潰瘍性病変の修復・治癒過程に形成されると考えられた.