日本消化器内視鏡学会雑誌
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慢性骨髄性白血病の経過中に発生した多発性小腸大腸潰瘍の1剖検例
山田 英明佐田 玲子永富 式子根引 浩子篠原 昭博中尾 昌弘針原 重義小野 時雄門奈 丈之小林 絢三
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1990 年 32 巻 3 号 p. 602-609

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抄録
 症例は,55歳,女性.慢性骨髄性白血病で通院加療中,急性転化を来したため入院した.入院後,prednisolone 60mg/day,6MP 100mg/day, vincristine 1mg/weekで治療を開始したが,治療開始直後より腹痛が出現し,第47病日より下痢を生じ,注腸X線,ならびに大腸内視鏡検査により大腸に多発性潰瘍を認めた.第62病日より,500~7,000ml/dayの下血を生じるようになり,保存的治療に反応しないため,緊急手術を施行した.その結果,小腸,大腸に多発性の潰瘍を無数に認めたため,病変の最も多発していると思われた回腸,横行結腸の部分切除を行った.術後,prednisoloneを漸減,中止したが,腹壁縫合部が次第に縫合不全状態となり,腸液,胆汁漏出に伴う化膿性腹膜炎により死亡するに至った.剖検では,小腸,大腸潰瘍は著明に改善がみられた.以上より,本症例の多発性小腸,大腸潰瘍は,組織学的所見とその臨床経過よりステロイド剤によるものと推測された.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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