抄録
患者は65歳,男性.主訴は背部痛で手術歴はなく,1989年2月6日精査目的で当科に入院.腹部単純写真でイレウスの所見を認めたが,全身状態良好のためlong tubeを挿入し経過観察した.tubeからの回盲部造影で,回盲弁近傍に母指頭大の腫瘤を認め,内視鏡で回盲弁上唇上の有茎性嚢胞状腫瘤を確認した.リンパ管腫を最も疑い,内視鏡的ポリペクトミーを施行した.大きさは18×10×20mmで,組織学的には小腸粘膜に覆われた海綿状リンパ管腫であった.著者らの検索範囲で回盲弁上の本腫瘍の報告は,本邦・欧米ともに1例ずつのみであり,本症例も含めた3例はいずれも,リンパ管腫としては例外的に有茎性であり,回盲弁という収縮運動の多い部位に存在したためと推定された.また,茎が比較的太かったものの術後にはイレウス等の合併症は出現せず,この部位は安全に内視鏡的ポリペクトミーが施行可能であると考えられた.