抄録
43歳主婦,カルチノイド症候群を呈したにもかかわらず,転移を伴わない胃カルチノイド腫瘍例.右季肋部疝痛発作のために近医で腹部超音波検査と上部消化管X線検査を受け,胃前庭部に隆起性病変を発見されて当科を紹介された.外来通院中に顔面紅潮,頭痛,心悸亢進が発作的に出現するので尿中5HIAAを測定したところ,排泄増加が明らかになったのでカルチノイド腫瘍を疑い,精査加療を目的に入院した.上部消化管X線検査で胃前庭部大彎に扁平な広基性の隆起が発見され,内視鏡検査では表面平滑で発赤やびらんを伴わない直径約2.5cmの山田II型のポリープをみとめた.手術時の迅速標本でカルチノイドと診断され,胃亜全摘術が施行された.本例はカルチノイド症候群を呈し,尿中5HIAAの上昇をみたが,術前の胸部X線検査や腹部超音波検査,術中のリンパ節や肝の検索では転移がみとめられず,術後4年を経過しても尿中5HIAAの上昇を含む再発をみていない.尿中5HIAA上昇を伴いながら転移を伴わない非常に稀な症例として報告した.