日本消化器内視鏡学会雑誌
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膵のsolid and cystic tumor(SCT)の1例
―自験例および本邦報告例の検討―
胡井 智川本 克久光藤 章二道中 智恵美西田 博児玉 正加嶋 敬岡野 均上田 敬今西 仁土橋 康成伏木 信次
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1990 年 32 巻 7 号 p. 1692-1701_1

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抄録
膵のsolid and cystic tumor(SCT)の1症例を経験したので,現在までの本邦報告例の検討を加えて報告した.症例は52歳,女性.腹部超音波,超音波内視鏡,腹部CTにて膵頭部に7cm大の石灰化を伴う充実性嚢胞性腫瘍を認め,逆行性膵管造影では同部のsmoothな狭窄,腹部血管造影では同部の圧排所見を認め,膵嚢胞性腫瘍の術前診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は9×9×8cmの大きさで線維性被膜を有し,充実性部分と出血壊死性部分とが混在していた.組織学的には均一多角形で豊富な明るい胞体を有する腫瘍細胞が充実性シート状あるいは偽乳頭状に増殖していたが,核の異型性はほとんど見られなかった.胞体内にはPAS陽性顆粒を認め,酵素抗体法でα1-antitrypsin陽性細胞が認められた.電顕的にはzymogen様顆粒が認められた.以上の所見より本腫瘍はacinar cellへの分化を示した膵SCTと診断した.本邦報告例の検討より,膵SCTは若年女性に好発し圧排性の増殖を示すlow grade malignantな腫瘍であり,適切な外科的処置が行われれば比較的良好な予後が期待される腫瘍であると考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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