1990 年 32 巻 7 号 p. 1709-1717
症例は36歳,女性.昭和48年にSLEと診断され,ステロイド剤の維持療法が行われていたが,昭和62年12月よりSLE腎症に対し,ステロイドのパルス療法ならびにcyclophosphamideが投与された.翌63年1月,突然,腹痛,嘔吐,下痢,発熱をきたし,2カ月半後,精査にて空腸起始部及びやや肛門側2カ所に管状狭窄性病変を認めた.手術が施行され,上記2病変以外に回腸にも狭窄が認められた.組織学的には非特異的潰瘍で,血管炎の所見等は無く,免疫組織学的検索でも免疫グロブリンの沈着は認められなかった.以上より,本例はSLEの治療中に,ステロイドパルス療法及びcyclophosphamideによる障害作用が加わって生じた多発性小腸潰瘍と考えられた.