抄録
Gastritis cystica polyposa(GCP)を母地として発生したと思われる残胃吻合部重複早期癌の1例を経験したので報告する. 症例は63歳男性,33年前にBillrothII法の胃切除術を受けている.1989年6月心窩部痛を主訴として近医受診し,胃内視鏡検査にて吻合部大彎側を中心とした,ひだの肥厚,粘膜の発赤およびポリープ状隆起が認められ生検組織診断により,GCPに合併した残胃吻合部癌と診断され,当院にて7月残胃全摘術が施行された.切除標本では胃空腸吻合部に大彎を中心としたひだの肥厚および発赤が認められ,前壁にはIIc様陥凹を伴うイモムシ様隆起が認められた.病理組織検査では全周性にわたるGCPの変化と,その変化に囲まれるようにして重複早期癌が認められ,GCPを発生母地とした癌であると考えられた.本邦におけるGCPに合併した残胃吻合部癌の報告例は17例みられ,平均手術間隔は23年と長く,手術術式ではBillrothII法(88%)が多数をしめ,また男性(82%)に多かった.以上の報告例および関連文献による考察により,GCPあるいはGCP様変化をもたらす環境と発癌との間には,なんらかの因果関係があることが推察された.