理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
Print ISSN : 1341-1667
原著
片側と両側で行うFunctional Reach Testにおける運動戦略の検証
—体幹回旋・側屈角度と肩甲骨外転,足圧中心軌跡の比較—
辻 修嗣宮﨑 純弥
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2018 年 33 巻 5 号 p. 739-742

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抄録

〔目的〕片側と両側で行うFunctional Reach Test(FR)における体幹の回旋および側屈運動と,肩甲胸郭関節における肩甲骨外転の影響に加え,リーチ距離とcenter of pressure(COP)軌跡の前後・左右各移動距離との関係性について明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常成人男女21名とした.一般的なFRと体幹の運動を抑制した両FRの2種類のリーチ課題を行い,最大リーチ距離と最大到達時の体幹の回旋・側屈角度,肩甲骨の外転距離,COP軌跡を測定し,各変数の比較と各変数間の相関について検証した.〔結果〕両課題の比較において有意差を認めたのは,リーチ距離と左右X軸COP軌跡長,体幹回旋角度,肩甲骨外転距離の4項目で,有意差を認めなかったのは前後Y軸COP軌跡長と体幹側屈角度の2項目だった.FRでは体幹の回旋に伴い肩甲骨は外転し,両FRでは肩甲骨は上方回旋することが推察された.Y軸COP軌跡長とリーチ距離との相関の強さは両測定で同等であり,FRにおいて体幹の回旋と側屈に負の相関を認めた.〔結語〕FRの運動要素には,体幹の回旋と肩甲胸郭関節における肩甲骨の外転運動,COPの測定上肢側への側方移動が含まれていた.一方,両FRの運動要素は,体幹の回旋や側屈運動,COPの側方移動はわずかで,肩甲骨は上方回旋していると考えられた.FRと両FRは,このような運動戦略を含んだ姿勢制御を行い,同等の安定性限界を反映する動的バランステストであることが示唆された.

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