1991 年 33 巻 2 号 p. 278-285
症例は83歳女性.平成元年7月より嚥下困難を覚え,次第に増強するため8月初旬近医を受診.上部消化管造影にて食道中部の隆起性病変を指摘され,精査目的のため当院へ入院した.入院後上部消化管造影,内視鏡検査を施行し,生検組織検査により平滑筋肉腫を疑い,腫瘤上端の経内視鏡的部分切除を行い,病理組織学的に平滑筋肉腫と確診した.他に異常所見を認めず,本症例は食道原発性平滑筋肉腫と診断した.手術,更にX線照射療法も拒否されたため経内視鏡的切除を試みるも不成功に終わった.入院後の食道X線検査では腫瘤は急速に増大し,そのDoubling timeは0.64カ月と算定された.併せて,現在まで本邦で報告された食道原発1生平滑筋肉腫64例の分析結果を述べた.