1992 年 34 巻 10 号 p. 2379-2386_1
症例は22歳,男性.上腹部痛,嘔吐,体重減少を主訴として当科に入院した.胃幽門部に浅い潰瘍とびらん,十二指腸球部に小隆起性病変の多発,十二指腸第2部の狭窄と縦走潰瘍及び"cobblestone appearance"を認め,いずれの部位の生検でも肉芽腫を認めた.入院時より高カロリー輸液を施行し,Elemental Diet, Salazosul-fapyridineの投与を付加し寛解に至った.胃・十二指腸Crohn病が保存的治療で寛解し得たのは本邦では自験例を含め4例で,また本邦報告例16例のうち14例(88%)が空腸・回腸・大腸Crohn病の経過中に胃・十二指腸に病変を合併したものであり自験例の様に最初から胃・十二指腸症状で発症した症例は稀である.