抄録
症例は38歳女性.腹部単純X線検査で右横隔膜下腔に直径7cmの楕円形の輪状石灰化,左季肋部から左側腹部,骨盤腔にかけて直径1cmから3cmの輪状石灰化を約12個指摘され精査目的で入院.石灰化腫瘤の内容物は腹部US,CT,MRI画像上,純度の高い脂肪と推測され,卵巣皮様嚢腫の腹腔内播種が疑われた.腹腔鏡では腫瘤は薄い被膜で覆われ,白色調を呈していた.開腹術で36個の腫瘤を摘出した.組織学的にはほとんどの腫瘤の内容物は脂肪で,一部の腫瘤には好酸性の硝子様物質が認められた.組織学的には皮様嚢腫の確診は得られなかったが,既往歴,腫瘤の画像所見,経過,文献上の知見から,良性の卵巣皮様嚢腫の腹腔内播種と診断した.類似の症例は4例の報告をみるに過ぎず,極めて興味ある症例と考えられた.