1994 年 36 巻 10 号 p. 1954-1963
C領域における内視鏡的粘膜切除術(EMR)の成績を,斜視型2チャンネルスコープを使用するようになった最近3年間(後期)とそれ以前(前期)に分けて比較検討した.初回治療においてI群(complete resection)と判定された症例は,前期は21例中5例(23.8%)であったのに対して,後期は19例中13例(68.4%)と増加した(P<0.01).EMR後に遺残や再発を認めた症例は,前期ではsm浸潤のために直ちに追加手術した1例を除くと20例中8例(40.0%)であったのに対して,後期では19例中4例(21.1%)と減少傾向がみられた.偶発症は前期と後期で発生率に差はなく,ほとんどが切除直後の少量出血で,重篤なものは穿孔した1例のみであった.技術的に難しいと考えられているC領域においても(1)機器の改良,(2)技術的な工夫,(3)偶発症に対する配慮により,A・M領域と同様にEMRが可能であり,斜視型2チャンネルスコープは切除困難部位の克服に役立っと思われた.