1994 年 36 巻 10 号 p. 2035-2040_1
症例は83歳,男性.突然の下腹部痛,下血を主訴に来院.直腸診で直腸出血を認め,また全周性に弾性硬の粘膜を触知し精査目的で入院となった.大腸X線検査では直腸およびS状結腸に非連続性の全周性狭窄を認めた. 大腸内視鏡検査では直腸粘膜にびらんと全周性狭窄,またS状結腸にも強度の粘膜浮腫と出血を認めた.生検の結果では虚血性大腸炎が示唆され,臨床経過並びに画像診断から自験例を虚血性大腸炎と診断した.虚血性大腸炎の直腸発生は稀であり,さらにskip lesionの報告例は極めて少なく自験例は病因論的に興味ある症例と考えられたので文献的考察を加え報告した.