日本消化器内視鏡学会雑誌
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上部消化管内視鏡検査後に発症した幽門前庭部のAGMLの検討
板野 聡寺田 紀彦橋本 修松川 啓義白川 靖博
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1995 年 37 巻 10 号 p. 2176-2184

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抄録

上部消化管内視鏡検査(ES)後に発症した幽門前庭部の急性胃粘膜病変(AGML)症例について検討したので報告する.最近の3年間に経験したAGMLは36例で,同期間のES症例の0.429%に相当した.男女比は21:15で,平均年齢は男性43.3歳,女性48.5歳であった.直前ESが初回のものは22例・2回目のものが8例で,この両者で83.3%を占めた.施行医では,経験年数が少ないほど発生頻度が高い傾向にあった.直前ESからAGML発症までの期間は33例(91.7%)が8日以内であった.発症時の症状は,激烈な心窩部痛や嘔気・嘔吐で,ES所見では30例(83.3%)で出血性ビランがみられた.部位は,全例胃前庭部が中心で,体部や十二指腸球部におよぶものもあった.誘因にストレスや暴飲暴食があったが,不明のものもあった.慢性潰瘍に比して治癒までの期間は短く,ESで経過観察できた30例では,3~4日目には出血性ビランは消失し,83.3%の症例は遅くとも21日目には治癒していた.

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