日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
超音波内視鏡により経過観察しえた上部消化管腐蝕性病変の1例
小市 勝之小川 滋彦中野 由美子池田 直樹若林 時夫川浦 幸光
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 37 巻 10 号 p. 2201-2204_1

詳細
抄録

症例は21歳,男性.主訴は吐血.自殺目的で塩酸濃度9.5%の洗浄剤を服用した.上部消化管内視鏡検査では,胃粘膜はいわゆる急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion,以下AGML)の所見であった.入院第4病日に施行した内視鏡所見では胃内に凝血塊はみられなかったが,初回内視鏡所見と同様に浮腫性変化が強く,拡張は不良で易出血性であった.また同時に施行した超音波内視鏡(endosaopic ultrasonography,以下EUS)所見は,幽門部を中心に全周性に第3層の著明な肥厚が認められ,エコーレベルは低下しており,内部エコーは不均一であった.しかし,第11病日にはこれらの所見は改善していた.これまで腐蝕性病変においてEUS所見の検討を行った報告はみられない.本症例のEUS像とこれまで報告されているAGMLのEUS所見とには類似が認められた.攻撃因子の増強という視点から腐蝕性病変をみた場合,AGMLの成因について示唆に富む症例と思われた.

著者関連情報
© 社団法人日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top