1996 年 38 巻 1 号 p. 36-44_1
症例は75歳,女性.全身倦怠感を主訴に近医受診.小球性低色素性貧血及び便潜血陽性を指摘され,精査されるも原因不明であった.貧血精査目的に当院を受診.上部消化管内視鏡では胃前庭部に限局する毛細血管拡張を認め,gastric antral vascular ectasia(GAVE)を疑い,診断目的に内視鏡的粘膜切除術施行.病理組織学的には粘膜固有層内に多数の拡張した毛細血管の増生が認められた.以上よりGAVEと診断し,ヒータープローブによる焼灼療法を施行した.治療後,毛細血管拡張は消失,貧血は著明に改善し,経過良好である.本症に対するヒータープローブ治療は安全で効果的な治療法と思われる.更に,本症が本来良性疾患であることを考慮すると内視鏡治療を第一選択にすべきであると考えられた.