食道表在癌自験例212例のうち表層拡大型食道癌 (superficial sprcading carcinoma of the esophagus:SSCE) の定義を満たす14症例 (6.6%) に対し臨床病理学的検討を行った.他の食道表在癌に比べて,SSCEは腫瘍径は大きいにもかかわらず,深達度・脈管侵襲率・生命予後に差はなく,リンパ節転移率は有意に低かった (p=0.03) .また多中心性に発生する傾向がみられ,多中心発生群は単中心発生群より腫瘍径が有意に大きい (p< 0.01) にもかかわらず,深達度・リンパ節転移率・脈管侵襲率に差はなかった.このような表層進展性や多中心性から,多発癌と同様,SSCEでも食道粘膜が当初より広範囲な面を持って異型性を示し,それが次第に異型性を増し,表層拡大型の上皮内癌に発展し,その中で悪性度の高い部分が独自に深部浸潤を起こしてくることものと推測された.