日本消化器内視鏡学会雑誌
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保存的治療により改善をみた回盲部単純性潰瘍の1例
東條 正英西山 勝人北嶋 直人伊東 俊夫稲留 哲也渡邊 信木下 芳一千葉 勉
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1996 年 38 巻 10 号 p. 2464-2469_1

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抄録

 症例は17歳,男性.下血を主訴に入院となり,大腸内視鏡検査にて回盲部に境界明瞭な深い潰瘍を認めた.組織学的には非特異的な慢性炎症像を示し,肉芽腫や陰窩膿瘍を認めなかった.また,口腔内にアフタ性潰瘍を認めたほかには,外陰部潰瘍や,ブドウ膜炎,結節性紅斑などの皮疹の既往はなかった.以上より本症例を回盲部単純性潰瘍と診断した.中心静脈栄養とsalazosulfapyridine1日3gの内服投与を開始したが,1カ月後に行った内視鏡検査では,潰瘍は拡大傾向にあった.このため,プレドニゾロン1日40mgと塩酸アゼラスチン1日2mgの内服投与を追加した.潰瘍はその1カ月後には著明に縮小し,プレドニゾロン投与開始後3カ月でほぼ瘢痕治癒した. 回盲部単純性潰瘍は保存的治療が困難で,外科的に切除されることが多い.われわれの症例は,プレドニゾロンなどの保存的治療により著明な改善を認めた稀な1例と考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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