抄録
症例は57歳男性.偶然の機会の大腸内視鏡検査にて,回腸末端部に多発性の潰瘍性病変が認められた.これらの潰瘍性病変は2年3カ月にわたり計5回定期的に内視鏡で観察された.その観察中に回盲弁より2cm口側にある潰瘍性病変の1つが次第に隆起し,直径1.5cmの粘膜下腫瘍様の形態を呈してきた.内視鏡下生検では腫瘍性病変は認められなかったが,形態的に悪性腫瘍を否定し得なかったため回盲部切除術が施行された.切除された腫瘍性病変は,病理組織学的にInflammatory Fibroid Polyp (IFP)と診断された.回腸末端部のIFPは稀であり,さらに,その発育過程はよく知られていない.われわれは,回腸末端部のIFPの発育を内視鏡的に経過観察し得た.このIFPの発育過程の観察は,機械的刺激が粘膜障害部に持続的に加わることが,IFP発生の原因の1つである可能性を示唆するものと考えられた.