1996 年 38 巻 9 号 p. 2161-2166_1
腫瘍の丈が低く,従来の表面型腫瘍と比較して,側方への進展を主体とする側方進展型大腸腫瘍47例 (結節型32例,非結節型15例) について,内視鏡所見,病理組織所見を対比し,本腫瘍の臨床病理学的特徴とその治療方針について検討した.結節型と非結節型の分類は内視鏡,実体顕微鏡,および切除標本にて行い,腫瘍表面がIIa様小結節の集簇からなる病変を結節型,結節の集簇を作らない平坦な病変を非結節型とした.両腫瘍とも上記の特徴で判別可能な10mm以上の病変を対象とした.腫瘍径の平均値は結節型が29mmと非結節型18mmよりも有意に大きく,占居部位は結節型で直腸・盲腸に全体の78%が存在したが,非結節型は各部位に分散していた.組織学的には,結節型では腺腫内癌が18例 (56%) と多数を占め,sm癌は5例で,うち3例はsm1への微小浸潤であった.一方,非結節型では腺腫成分の無い純粋癌が9例 (60%) を占め,そのうち4例は大きさ20mmから38mm (平均26.8mm) でsm中層以下への深部浸潤を認めた.以上の成績より,両腫瘍とも側方への発育進展を示すという共通点を有するが,結節型は非結節型に比べ悪性度が低いため,結節型で明らかなsm浸潤を示唆する所見がない場合は内視鏡的治療の適応と考えられた.しかし,非結節型は20mm前後でsm深部浸潤を来す症例があり,本腫瘍の内視鏡的治療にあたっては慎重な対応が必要と思われた.