1996 年 38 巻 9 号 p. 2174-2178_1
症例は77歳男性.労作時呼吸困難があり,平成2年10月当科入院.葉酸欠乏性貧血と診断.同入院中に実施した食道胃内視鏡にて逆流性食道炎をみとめた.外来経過観察中胸やけを訴えたため食道胃内視鏡施行,食道下部に直径5mm前後のやや白色調,表面顆粒状の広基性隆起病変の多発を認めた.隆起の一部をポリペクトミーしたが,組織学的には乳頭腫様病変で,経過から肥厚性食道炎の進行例と考えられた.本例のように5カ月という短期間に乳頭腫様の肥厚隆起の形成をみた報告はなく,肥厚性食道炎や乳頭腫の成因を考える上で貴重な症例と思われたので報告した.