日本消化器内視鏡学会雑誌
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急性出血性直腸潰瘍50例の臨床的検討
中村 志郎大川 清孝原 順一渡辺 芳久斯波 将次上田 渉渡辺 憲治鈴木 典子足立 賢治小畠 昭重押谷 伸英松本 誉之谷口 道代河合 弘毅金 鎬俊宮城 邦栄北野 厚生荒川 哲男小林 絢三
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1997 年 39 巻 2 号 p. 175-182

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抄録

過去10年間に経験した急性出血性直腸潰瘍50例について,その臨床像と内視鏡所見の特徴をこれまでの報告と比較検討した.患者はこれまでと同様に男性20例,女性30例と女性に多く,平均76.3歳の高齢者であった.入院時原疾患では脳血管障害が18例と最も多かったが,下血や脱水のみの14例や大腿骨頸部骨折の7例など全身状態の良好な症例も多く,本症が重篤な基礎疾患を有する患者に限らず発症することが明らかとなった.併存症では28例に高血圧,11例に糖尿病を認め,さらに詳細の明らかな48例中47例が発症時寝たきり状態にあり,本症の発症には動脈硬化の要因と寝たきり状態という身体的要因が深く関係していると考えられた.また,本症では無痛性大量鮮出血が特徴とされるが,肛門痛のみの2例や極少量の出血の9例などがみられた.内視鏡所見では,潰瘍は多発傾向で歯状線直上の下部直腸に局在し,記載の明らかな47例中29例が全周性潰瘍を呈し,これが本症に特徴的な所見と考えられた.また,患者体位を側臥位にすることが治療法として有用である可能性が示唆された.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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