日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸早期癌に対する内視鏡的分割切除の意義と問題点
井上 雄志鈴木 茂鈴木 衛村田 洋子飯塚 文瑛中村 哲夫本間 直子高崎 健
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1998 年 40 巻 10 号 p. 1857-1863

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抄録

過去5年間に東京女子医科大学消化器病センターで経験した大腸早期癌で内視鏡的分割切除を行った42例を対象に分割切除の有用性と問題点を検討した.分割切除の切除回数は,形態では結節集簇様病変が約5回,腫瘍最大径では30mm以上の病変が約6回と多かった.切除標本が完全回収できたのは36例(86%)で,回収した標本の最大切片は平均約14mmであり,全例に壁深達度診断が可能であった.m癌は35例で再発例はなかった.sm癌は7例で,内視鏡的に完全摘除し得た4例中全回収できなかった1例に局所再発を認めた.不完全摘除は3例で,いずれもsmmassive invasionで追加腸切除を行い,2例に標本上癌遺残を認め,癌遺残を認めなかった1例には1群および2群にリンパ節転移を認めた.このことから大腸早期癌の内視鏡的分割切除はm癌に対しては有用であるが,sm癌の分割切除は慎重にすべきと思われた.

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