1998 年 40 巻 10 号 p. 1864-1871
症例は57歳の男性.人間ドック時に,胃に異常を指摘され近医にて胃内視鏡検査を実施された.体下部小轡にIII+IIc型病変を認め,1カ月後の再検査の際に実施した生検にて腺癌が得られ当院に紹介となった.近医初診より2.5カ月後に当院にて実施した胃内視鏡検査ではIIa+IIc型早期胃癌と診断し,胃全摘手術を実施した.乳頭状および髄様増殖を示す腺癌で深達度はsm,免疫染色で腫瘍細胞にAFPが陽性であった.血清AFP値はドック時には7.8(ng/ml)であり,術前には147.6と急上昇し術後に9.3と正常化した.短期間の形態変化と平行してAFPが上昇したAFP産生早期胃癌の報告例は本邦初であり,ここに報告する.