1999 年 41 巻 12 号 p. 2502-2508
緊急内視鏡を施行した下血症例を年齢別に分け,その原因疾患について検討した.40歳未満の若年者では32例中8例(25.0%)が虚血性大腸炎(IC)であり,全年齢層の下血症例の5.9%,全IC症例の23.5%を占めていた.また各年齢層の下血の原因疾患に占めるICの割合に差異を認めなかった.若年者IC症例では非若年者に比し基礎疾患を有する率が有意に低く,全例一過性型であった.一方,高齢になるほど狭窄型の占める割合が高くなり,狭窄型における基礎疾患を有する症例の割合は一過性型に比し有意に高値であった.若年者ICの発症には血管側因子の関与は少なく,これが若年者ICが軽症の一過性型を呈する理由と推定された.また習慣便秘を認める症例の割合は若年者と非若年者で差異はみられず,若年者ICの発症には種々の腸管側因子が関与しているものと考えられた.また若年者でも,ICを考慮した下血の鑑別診断をおこなう必要があるものと考えられた.