日本消化器内視鏡学会雑誌
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口腔咽頭領域における内視鏡観察と腫瘍性病変の内視鏡治療
永井 鑑河野 辰幸
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2005 年 47 巻 4 号 p. 1012-1019

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抄録

 消化管の入口である中・下咽頭の内視鏡観察と同部の表在性の癌に対する内視鏡治療について紹介する. 中咽頭から下咽頭さらに咽頭食道接合部にいたる局所解剖,特に喉頭の存在による複雑な立体構造を熟知し,高解像度の電子内視鏡を用いて系統的に観察して小さな表在性の癌を発見する.咽頭癌の高危険群を選別して観察するのが効率的である.発赤,白色調の粘膜肥厚,粘膜の微細な凹凸,白苔の付着,血管透見像の消失や異常が表在癌を疑う所見である.ヨード染色に頼れないので,充分な咽頭麻酔あるいは鎮静下に,通常観察と少数の生検で拾い上げ診断を行う.病変の広がりと多発病変の存在に注意する.拡大観察やnarrowband imagingも有用である. 中・下咽頭癌に対する標準的治療は切除手術と放射線治療である.内視鏡治療は未だ試験的治療であり,精密診断を兼ねて行われる.内視鏡治療の適応となるのは癌浸潤が筋層に及ばず最大径4cmまでの癌で,リンパ節転移のないものである. 治療は全身麻酔下に行う.ヨード染色で病変の広がりを明らかにした後,EMRC法による粘膜切除術あるいはアルゴンプラズマ凝固術を行う.EMRCでは一括切除にこだわらず,小範囲多分割切除を行うのが安全・容易である.治療中と治療後は誤嚥性肺炎と喉頭浮腫を予防するとともに,咽頭痛対策を行う. 本法は臓器が温存されるため治療後のQOLは良好に保たれる.しかし,再発・再燃に充分注意し,根治性に疑問があれば速やかに根治的手術や放射線治療などを追加することが大切である.

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