日本外科感染症学会雑誌
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症例報告
透析施行患者におけるゲンタマイシン透析前投与の2症例
福島 隆宏吉川 博佐藤 智人垰越 崇範畝井 浩子廣橋 伸之志馬 伸朗松尾 裕彰
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2018 年 15 巻 3 号 p. 248-252

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抄録

透析患者のゲンタマイシン(以下,GM)治療において,高いピーク血中濃度(以下,C peak)を得るために透析前の高用量投与が試みられているが,その安全性,有効性は十分検討されていない。今回,GMを透析前投与した 2症例を報告する。症例1:67歳女性。血液培養からカルバペネム耐性緑膿菌が検出され GM開始,投与終了 3時間後に血液濾過透析を施行した。Cpeakは 19.40μg/mLと十分な値が得られたが,トラフ値(以下,C min)は推奨値まで低下しなかった。血液濾過透析 2回ごとに 1回投与の投与で C minは推奨値まで低下し,開始 13日後に緑膿菌の消失を確認した。症例2:58歳男性。腹腔内膿瘍から多剤耐性 Enterobacter aerogenesが検出され GMを開始し,投与終了 30分後に血液透析を施行した。血中濃度から投与量,透析条件を見直し,有効 C peakを維持した。透析ごとの投与を継続し Cminは安全域に維持された。C minは,腎外クリアランス,透析設定等に影響されると考えられ,細やかな血中濃度測定の必要性を示唆する。

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© 2018, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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