日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
原著
肝切除術における臓器 /体腔手術部位感染発生の危険因子
井上 善博内山 和久
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 16 巻 1 号 p. 26-33

詳細
抄録

消化器外科領域のなかでも肝胆膵領域の手術は手術侵襲が大きく,術後合併症の発生率は比較的高い。とくに臓器 /体腔手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)は多く発生する術後合併症であるため,肝切除におけるその危険因子に関して本稿にて概説する。当教室において 2010年 1月から 2018年 6月までに施行した胆道・消化管再建を伴わない肝切除術 782例を対象とし,臓器 /体腔手術部位感染の危険因子について検討した。表層切開創 SSIが31例(4.0%),深部切開創 SSIが 15例(1.9%),臓器 /体腔 SSIが 130例(16.6%)であった。臓器 /体腔 SSIの最も多い原因としては術後胆汁漏 61例(46.9%)であり,次いで感染性腹水 32例(24.6%),断端膿瘍 31例(23.8%),消化管穿孔 4例(3.1%),腹腔内出血 2例(1.5%)の順であった。単変量解析において有意であった因子を用いて多変量解析を行った結果,アルブミン値 4.0g/dL未満,開腹肝切除,中央区域切除,手術時間 300分以上,術中胆汁漏陽性が臓器 /体腔 SSIの危険因子として同定された。近年の周術期管理の目覚ましい進歩にもかかわらず,臓器 /体腔 SSI発生は患者の QOLを悪化させるのみならず,医療経済的にも不利益をもたらす。そのため臓器 /体腔 SSI発生への対策を講じるうえで重要な,肝切除術における臓器 /体腔 SSI発生の危険因子について解説した。

著者関連情報
© 2019, 一般社団法人 日本外科感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top