日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
症例報告
術前化学療法中にRamsay Hunt症候群を発症し,播種性帯状疱疹・髄膜脳炎へ重症化をきたした進行食道癌の1例
上月 亮太郎峯 真司山下 公太郎大串 大輔佐々木 俊治岡村 明彦湯田 匡美速水 克今村 裕古川 恵一渡邊 雅之
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2019 年 16 巻 2 号 p. 136-139

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抄録

水痘帯状疱疹は varicella zoster virusによる感染症であり,日常診療で比較的よく遭遇する。今回,進行食道癌に対する術前化学療法中に Ramsay Hunt症候群を発症し,播種性帯状疱疹・髄膜脳炎へと重症化した 1例を経験したので報告する。症例は 70歳代の女性。胸部食道癌cT3N1M0,Stage Ⅲの診断で術前化学療法を受けた。術前化学療法2コース目の 9日目に顔面神経麻痺,10日目に耳介の発赤と播種性皮疹を認め,髄液検査結果と頭痛の症状から, Ramsay Hunt症候群・播種性帯状疱疹・髄膜脳炎と診断し治療を開始。その後脳出血を発症したが,抗ウイルス療法で症状の改善を認めたため,2期に分割し右開胸食道切除術と胃管による食道再建術を施行した。術後造影 CT検査で広範なリンパ節転移・多発肝転移を認め,再建術術後 36日目に死亡した。化学療法中の Ramsay Hunt症候群は急速な増悪を示す場合があり,また化学療法による有害事象との鑑別が難しいため,診断が遅れる危険性があり注意が必要である。

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© 2019, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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