日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
原著
食道癌術後縫合不全発症時の適切な対策と栄養管理
鍋谷 圭宏星野 敢首藤 潔彦
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2020 年 17 巻 2 号 p. 67-74

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抄録

食道癌に対する食道切除再建術後の縫合不全は短期予後のみならず長期予後も悪化させうる術後感染性合併症であり,予防が最重要である。しかし,発症した場合に炎症や感染を早期に抑制して重症化を防ぐ対策も重要である。本研究では,当科での200例の食道切除再建術施行後に縫合不全を発症した10例の臨床経過から,適切な対策と栄養管理を考察した。胸腔内吻合後の縫合不全は,発症率は低い(4/142例:2.8%)が正確な診断は難しく,再手術(3例)を含めた高難度の治療をただちに決断する必要がある。頸部吻合後の発症率は高い(6/56例:10.7%)が,5例(83.3%)が保存的治療で治癒可能であった。治療として,再手術や消化管外・内からの適切なドレナージと抗菌薬投与に加えて,空腸瘻を用いた経腸栄養は有用性が高い。食道癌術後AF発症時には,手術術式と病態に加えて患者因子を考慮した迅速な対応と栄養管理を患者ごとに適時適切に行うことが肝要である。

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© 2020, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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