現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
メインバンク介入型ガバナンスは変化したか?1990年代と石油ショック後との比較
広田 真一宮島 英昭
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ジャーナル オープンアクセス

2001 年 10 巻 p. 35-61

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抄録

本稿の目的は,これまで日本企業にユニークな特性と理解されてきたメインバンクの介入によるコーポレート・ガバナンスの機能が,1990年代に入っていかに変化しているかを検討する点にある.そのために,本稿では,電機・化学・建設の3部門の上場企業のうち財務危機に陥った企業(2年連続インタレスト・カバレッジ・レシオが1未満の企業)を分析の対象に取り上げ,この財務危機企業に対して,①メインバンクが経営に介人しているか,②メインバンクの介人があった場合,それは企業経営にいかなる変化を引き起こしているかを定量的に検討した.そして,1990年代の財務危機企業に対するメインバンクの介入の分析結果を,これまでメインバンク介人型ガバナンスがもっとも典型的にワークしていたと理解されてきた石油ショック後の期間(1974-82年)の分析結果と比較した.その結果,企業が財務危機に陥った際にメインバンクが経営に介人する確率は,90年代には石油ショック後に比べて大きく低下していること,また,メインバンクが介人したとしても,経営者交代の時期の遅れ,収益の回復の遅れなど,90年代にはその介入の効果が薄れていることを示唆する事実が明らかとなった.

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© 2001 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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