現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
JGB先物市場における即時執行制度とボラティリティ—戦略的注文行動の分析に基づく人工証券市場を用いた検証—
副島 豊
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ジャーナル オープンアクセス

2001 年 10 巻 p. 3-33

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抄録

注文が短い間隔で頻繁に板に到着するような注文駆動型市場では,注文の付け合わせ方法が価格変動や市場参加者の注文行動に影響を与え得る.JGB先物市場では1998年に注文付け合わせを即時執行するシステムを導入した際,板状態やその推移が市場参加者にとって判り難くなり,注文が意図通りに約定されない現象が以前より増加したため,短期的な価格変動が高まったと指摘されている.本稿では,即時執行により板情報の誤認が発生しやすくなった点に注目し,これが価格変動にどう影響するかを分析した.制度変更前後で市場環境が大きく異なっておリ,その影響を排除するためシミュレーション分析を採用した.まず,観測データからオーダーフローを復元しタイプ分けすることで,板状況に応じた戦略的注文行動の存在を確認した.次に,戦略行動に基づいて注文が発生する人工証券市場を作成し,ラグ情報に基づく注文の影響を検証した.その結果,注文意図が正しく反映されないケースが一部に発生するだけで短期的な価格変動が高まリ,ビッドアスクスプレッドの拡大,取引当たりの価格インパクト上昇など,市場機能の低下に繋がることが確認された.

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© 2001 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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