現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
世代間の生涯所得格差とオイラ一方程式の集計上の誤謬
平田 恵司郎
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ジャーナル オープンアクセス

2004 年 16 巻 p. 43-61

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抄録

本論文では,世代間に生涯所得の格差がある場合に,総消費鼠量を用いて測った異時点間の限界代替率に合まれる集計上の誤謬を分析し,日本のデータから実証的に計測している.資産市場のリスクシェアリングが十分に機能している場合,この種の実証分析で通常仮定される,時間について分離可能な相対的危険回避度一定(CRRA型)の牛涯効用関数のもとでは,経済を構成する主体の異時点間の限界代替率は主体間の生涯所得の差に依存せず,したがって総消費量を用いて限界代替率を測ることができる.一方,世代重複モデルでは,経済を構成する世代の生涯所得分布が変化する場合,時間について分離句能なCRRA型の生涯効用関数を用いたとしても,総消費量を用いて測った異時点間の限界代替率は,経済を構成する世代の生涯所得分布の変化に依存して決まり,代表的個人モデルに基づいた異時点間の限界代替率には集計上の誤謬が含まれる.本論文では,集計上の誤謬を考慮することで代表的個人モデルの時間選好率が見せかけ上負の値をとることと,安全資産利子率パズルが解消する可能性のあることを示している.

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© 2004 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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