抄録
症例は動脈硬化性疾患と虚血性大腸炎 (ischemic colitis : IC) の既往を有する82歳の男性. 腹痛・下血を主訴に発症5時間後に当院内科を救急受診し, IC再燃の診断にて保存的治療を施行されたが, 急激な全身状態悪化を来して発症26時間後に当科を紹介初診. 腸間膜動脈塞栓症による腸管壊死に伴う敗血症性ショック・多臓器不全の診断にて当科紹介1時間後に緊急手術を施行. 血性腹水と全結腸の色調不良を認めたが各結腸動脈の拍動は触知され, 全結腸型壊死型ICと診断. 結腸全摘・回腸瘻造設術を施行したが, 術後2時間目に永眠された. ICの大半は予後良好であるが, 急激な経過から不幸な転帰をとる症例が稀ながらも存在することを念頭におき, 厳重なモニタ監視下において腹膜刺激症状・全身性炎症反応症候群・ショック・代謝性アシドーシス出現の早期発見に努め, これら所見が出現した際には直ちに緊急手術を決断することが重要である.