2017 年 40 巻 1 号 p. 38-43
目的:地域医療の立て直しに際して,近年は家庭医や総合診療医など,かかりつけ医の導入が注目されている.本研究では静岡県菊川市の事例を通して,家庭医療診療所の設置が医療圏にもたらした受診の影響を動態的に把握することを目的とした.
方法:家庭医療診療所開院前後の受療行動の変化を知るために,K病院およびK診療所のレセプトデータを分析した.動向は診療所開設後1ヶ月を基準日として前後に渡り3年間,季節による受診の変動を考慮し3ヶ月ごとの月末平日データを用いた.
結果:圏域別に患者数や属性を分析した結果,K診療所の開設に伴う連携先のK病院からの患者の移行は僅かであると判断できた.特に診療所は近傍の高齢者から支持されていることが明らかになった.
結論:病院と診療所では,施設機能の相違が反映された役割分担が行われていると考えられた.