言語研究
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論文
ギリシア語の複合語形成における裸語幹制約
アンジェラ ラッリアタナシオス カリシモス
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2009 年 135 巻 p. 29-48

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抄録

本稿は語形成における制約の問題を扱い,現代ギリシア語の複合語の内部に派生接辞が現れないのは,複合語形成の出力に適用する「裸語幹制約」が働いているからであると主張する。この主張は現代標準ギリシア語と諸方言における種々のタイプの複合語によって支持されるが,とりわけ,インドヨーロッパ諸言語には存在せずギリシア語独特の動詞+動詞型の並列複合語(dvandva)が重要なデータとなる。この分析に対して一見反例となる現象もあるが,それは制約の適用に対する見かけの例外に過ぎない。すなわち,これらの反例と思われる現象は,再分析によって生じたものか,あるいは,通常の言語規則には従わない特殊な語彙化現象ないし借用語であると見なされる。

本稿は更に派生と複合の相互関係についても議論を進め,複合操作と派生操作は峻別できず,両者が相互に入り混じって適用することを論じる。この結論は,派生語を左側要素として含む複合語の形式を規制する適切な形態論的制約を設け,複合と派生が適用する順序を明示しないことで達成される。

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© 2009 日本言語学会, 著者
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