本稿はトルコ手話(TİD)における命令構文の特徴を扱う。命令構文の超分節的,形態論的,形態音韻論的特徴を明らかにするため,命令構文に見られる手指要素および非手指要素の性質や機能を検討する。通言語的な観察から,命令構文の動詞サインは,対応する陳述的構文における動詞サインに較べ,より緊張し急激な状態で現れることが,すでに知られている。また,形態論的レベルにおいては,受け手一致動詞(addressee-agreement verb)における一致要素の省略が,いくつかの手話言語で見られること,さらに,多くの手話言語において,発話の最後に現れるPALM-UPの手形が,命令構文で見られることが知られている。本稿では,これらの知見を踏まえつつ,トルコ手話の命令構文の詳細な記述を提供する。