言語研究
Online ISSN : 2185-6710
Print ISSN : 0024-3914
特集 アジア・アフリカの手話
日本手話における主語/目的語標示の助動詞について
今里 典子
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2014 年 146 巻 p. 31-50

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抄録

手話言語の主語/目的語標示を行う助動詞(AUX1やAUX2)については,まずSmith(1990)が,日本手話(JSL)と源を同じくする台湾手話(TSL)でその存在を指摘し,後にFischer(1996)が日本手話東日本方言(JSL-e)にもAUX1のみ存在する事を認めた。AUX2が動詞「見る」から派生した事は,2つの語の形状の類似性からSmithが示したが,どちらの研究者もAUX1の生成過程は明らかにしていない。Sapountzaki(2012)らは,指差し手形の「代名詞の連続」から派生したと仮定するが,十分な証拠が示されていない。本論では,日本手話西日本方言(JSL-w)にはAUX1とAUX2が存在することを見た上で,データの詳細な観察と分析から,JSL-wのAUX1は「「見る」→AUX2→AUX1の順に文法化により生成された」という仮説を提案し,その妥当性を検証する。

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© 2014 日本言語学会, 著者
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