言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
論文
英語前置詞byの時間義
平沢 慎也
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2014 年 146 巻 p. 51-82

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抄録

本稿は,英語のHe’ll be back here by five.やHe was dead by then.などに現れる前置詞byの時間用法(by [TIME])について,以下の記述を提示する。

 by [TIME]は,「時間軸上で[TIME]よりも前の何らかの時点からスタートした心的走査の終点としての[TIME]において,by [TIME]の修飾する動詞句が表す状態(より正確には,状態性動詞句が指示する状態,または非状態性動詞句が含意する結果状態)が成立している」ということを述べるための形式である。センテンス内ないしディスコース内のby [TIME]以外の箇所でも時間軸に沿った(過去側から未来側への)心的走査が行われており,かつ,by [TIME]が修飾する動詞句が,変化の結果状態を指示していると解釈できる状態性動詞句であるような環境(即ち言語的コンテクスト)で用いられるのが,プロトタイプ的な用法である。

 時間義のbyの振る舞いは,このようにby内部の意味とbyを包むコンテクストの性質の両面からアプローチして初めて適切に記述できる。コンテクストを考慮に入れた前置詞の意味分析の一つのあり方として,本稿の分析を提示したい。

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© 2014 日本言語学会, 著者
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