抄録
 これ迄、我々の研究室において、酸性降下物が森林衰退の原因と考えられる岐阜県の乗鞍岳と神奈川県の桧洞丸を対象に酸性降下物による土壌劣化の度合いを、バクテリアと糸状菌起源の指標有機分子を使って、示しうる可能性が示唆されてきた。 本研究では、その可能性が、人工的に酸性物質を散布する暴露実験において確認されうるか否かを検討した。その結果、次の事が、解った。  1.暴露実験において、上記のフィルドから得  られた可能性が確認され た。  2.暴露実験から、土壌劣化の度合いを示しう  る新たな指標有機分子として、バクテリア  起源の4種脂肪酸(i16:0、10Me16:0、16:1  ω7、18:1ω7)と糸状菌起源の3種脂肪酸   (16:1ω5、18:2ω6、20:2ω6、20:3ω6)、  及び2種Sterol、24-Methylcholesta-    5,7-dien-3β-ol、24-Ethylcholesta-    5,7,22-trien-3β-olの有望性が示唆され    た。