抄録
大気中には微量の低分子量有機酸類がほぼ普遍的に存在する。低分子量有機酸の主要成分である酢酸・ギ酸は、降水の酸性化、光化学スモッグ発生の関与、他の有機微量成分の動態との関連から大気中での循環が注目されてきた化合物である。しかし、有機酸の起源(バイオマス燃焼、草木等の直接放出、自動車排ガスや大気中前駆物質の光酸化など)は濃度測定により推定されているが、その生成・消滅機構や各生成の寄与率など詳細は明らかにされていない。 そこで本研究は、マイクロ固相抽出法を前処理としたガスクロマトグラフ・燃焼・安定同位体質量分析法(SPME-GC/C/IRMS)を用いて、特に酢酸の分子内安定同位体比を測定し、大気中でのより正確な循環像を明らかにすることが目標である。ここでは、この分析法を実際の大気試料へ適用させるまでのアプローチについて発表を行う。