抄録
東京湾において、表層海水中の溶存ガス状水銀濃度と海面直上の全ガス状水銀濃度を測定した。得られたデータに基づき、ガス交換モデルにより水銀の放出フラックスを見積もった。さらに湿性・乾性沈着物サンプラーを用いて、東京湾近辺で水銀の湿性・乾性沈着フラックスを測定した。東京湾の表層海水はガス状水銀に関して過飽和であり、見積もられた水銀の平均放出フラックスは140±120 ng m-2 d-1であった。年間の水銀の湿性沈着フラックスは19±3 μg m-2 yr-1であり、乾性沈着フラックスは20±9 μg m-2 yr-1であった。一日当たりの全沈着フラックスは110±20 ng m-2 d-1となり、東京湾における水銀の放出フラックスと沈着フラックスは同程度であることが示唆された。