抄録
大気経由の無機態窒素成分の沈着は、沿岸海域における窒素循環において大きな役割を担うと考えられている。大気中の無機態窒素成分は、主にアンモニア態窒素及び硝酸態窒素として存在しているが、その大気中における化学的性状の差異は、両成分の沈着挙動を複雑かつ興味深いものとしている。演者らは日本列島周辺海域において、大気エアロゾル及びその関連物質の長期観測を行ない、これらの成分の大気中における挙動について知見を得てきた。また、2000年より本格的に稼動した東アジア酸性沈着モニタリングネットワーク(EANET)のデータが近年公開され始め、精度良い湿性沈着データが蓄積されつつある。本講演では、これらの観測結果をもとに、主に日本海における無機態窒素成分の沈着挙動の特徴とその支配要因について、得られた知見を報告する。