抄録
上部マントルの含水率と温度構造を電気伝導度構造と地震波P波速度構造を用いて推定する試みを紹介する.本方法では鉱物組成をpyroliteやharzburgiteなどの複数の鉱物組成からなる上部マントル組成を仮定している.具体的には,(1)適当な鉱物組成を与え,含水率0の下で,電気伝導度構造(電気伝導度温度)とP波速度構造(地震波速度温度)それぞれから温度構造を推定する.(2)電気伝導度温度と地震波速度温度が調和的であれば,その場所での上部マントルはドライで温度構造が電気伝導度温度・地震波速度温度の状態であると解釈する.(3)電気伝導度温度と地震波速度温度が調和的で無い場合,上部マントルの温度構造は地震波温度構造であると仮定し,電気伝導度構造から含水率を見積もる.講演の後半では,この方法を中国東北部のスタグナントスラブ上の上部マントルに関して適用した例を紹介し,上部マントルの状態に関しての解釈を試みる.