抄録
水銀の湿性沈着は、大気中の反応性ガス状水銀(reactive gaseous mercury, RGM)と粒子状水銀(Hg(p))の降水への取り込みに依存する。本研究では、大気中に全て粒子状で存在する他の微量元素(Cd、Cu、Mn、Ni、Pb、V)の洗浄比を基に、わが国における水銀の湿性沈着量に対するHg(p)の取り込みの寄与を推定した。これには、2004年4月~2005年3月までの1年間に全国の10地点で測定された微量元素の湿性沈着量と大気中濃度を用いた。降水へのHg(p)の取り込みによる寄与率は、10地点の平均で26%であった。これより、わが国では降水への水銀の取り込みは、RGMを主体とするものであることが示唆される。このRGMは、大気中においてオゾン等によるガス状金属水銀(Hg(0))の酸化で生成した可能性が高い。