抄録
沖縄県の西南部に位置する西表島は、ユーラシア大陸や台湾に近いために、これらの地域からの酸性雨に代表される酸性物質の長距離移流による影響を、本邦の他の地域よりも受けやすい。降水のpH観測より、9月、10月の台風時期の海塩の巻き上げのある時期を除くと、平均pH 4.7前後の酸性雨が降っていることがわかった。酸性降下物が島に与える影響を調べるため、pH(H2O)とpH(KCl)を測定した。交換性陽イオン含量が小さいほどpHは低い値を示した。ケイ質砂岩層が広く分布する流域ではHCO3-による酸緩衝能は小さく、酸性土壌や陸水への影響が顕著になることが懸念される。